今日の。
高校生だったDくんはチーズ蒸しパンが大好きで、毎日、お昼にチーズ蒸しパンを食べていました。本当に、狂ったように毎日、チーズ蒸しパンを食べていました。
その日も、いつものようにコンビニで買ってきたチーズ蒸しパンの袋を開け、一口、かじりつきました。普通に美味しかったそうです。ところが、二口目をかじりついたとき、Dくんは思いました。「もう、いいや」と……
結局、Dくんはその日以来、チーズ蒸しパンを食べられなくなってしまったそうです。
彼はシニカルな表情を浮かべながら「きっと、飽きちゃったんだ」と述懐しました。一口目までは普通だったのに、二口目をかじりついた瞬間、そのチーズの匂い、もちもち感、舌触り、生地の甘さ、色、持った感じ、すべてにウンザリしたんだ、と……正直言って「飽きる」という感情のメカニズムについては、よくわかりません。そのような悲劇は、ある日突然、理由もなく訪れるのでしょう。(しかも秒単位で!)
しかし私は彼のことを笑えませんでした。なぜなら1面をクリアした瞬間、何もかも、どうでもよくなってしまう可能性は、ゲーマーにだってあるからです。その日から私はコントローラを握れなくなってしまうかもしれません。
心の底から大好きで楽しいと思っていた趣味であったり、本当に大切にしようと考えていたものが突然輝きを失ってしまうことはボクもよく体験する。
その時はまた新しいお気に入りや楽しいことを探しに行かないとね。
ボクも狂ったように同じものを食べてしまうため、結構な頻度でこの話と同じことが起こる。東京という街にはこんなにも美味しい物で溢れているのだから、毎日知らないお店へ訪れ食べればいいのにと頭で理解しながら何故かできない。貧しさ故なのか、めんどくさがってなのか、両方なのか。
きっと東京を離れるときに、大きな後悔として「もっといろんなお店で色々と食べてみればよかった」と思うんだろうな……。愚かだね。