年末におきたエンジンブロック辺りからのクーラント液漏れを修理してもらうべく、いつもお世話になっているディーラーへ持ち込んだ。そのときは本当に軽い気持ちで「まー6万kmも乗っているとガタもではじめますよねーハハハー」という感じで引き渡した。
鍵をあずける時にも「割とバイクで走行距離6万kmって一つの節目なんですよね。ここからは今まで壊れなかったところも突然壊れたりする、そんなタイミングです」と言われたことにくわえ、車検時にポロッと言われた「原因不明のECUエラー警告が1件ありました。次出るようならECU交換(部品代 30万)」も心の底に横たわる澱のように存在していた。
DucatiのECU交換は厄介なシステムになっていて、イモビライザーが紐づいていることに加え、ECUの固有IDと車両番号の組み合わせが本社システム管理下にあるため中古部品を購入し載せ換え交換しても解決できないらしい。もし交換するのであれば本社から部品を取り寄せて初期化・システム再登録になるとのこと。(ヤフオクで安いの探したので一応できますか?と確認してみた)
「一応乗り換えも少し考えていて……Super Sport 950Sで良い車両があったりしますか?」と尋ねると、前のめり気味に「ちょうどレンタルアップ品を売りに出そうとしていました。お見積りしておきますね」と話が進み、そちらは修理上がりに貰えるようお願いした。
修理は一週間ほどだったため週末前に修理完了の連絡と見積もりが届いた。
「レンタルアップとはいえお高いんでしょう?」と思いながら見積もりを確認すると、車両価格よりも下取り金額が40万だったことに驚いた。2年前には車検前だったこともあって「下取りでも20万円くらいですかねー」と言われていたので、それが40万で下取りしてもらえるなら、この機会に乗り換えるべきなのではないか?と突然乗り換えを検討するようになった。
ほんの1週間前まで「動かなくなるまでずっと一緒だよ」と思っていたこともあってクーラント交換と部品交換(2万円)をお願いしてしまったのだけど……ただそれ込みでも40万下取りなら悪くないなーと思えた。
950Sの見積もりでは、車両本体価格170万+効きが悪くなったグリップヒーター、ETC2.0セットアップなどをお願いして乗り出し合計200万(税込み)-40万。割と乗り換えるなら現実的な価格にも思えた。パニアケースも互換があるためそのまま使えるのも魅力的だけれど、一番はLCDモニターになるのが嬉しい。なんという頭を悩ませる問題だろうか。
Ducati Super Sport S 937 / 2018を6年間 総走行距離 59,444km乗った総評
バイク初心者が安心して乗れるバイクだった
Ducati『Monster 821』に乗ることを決めたのは40歳を迎えるギリギリ手前の5ヶ月前。一念発起して普通二輪・大型二輪の教習所を連続して通って免許取得。つまり一度も公道を二輪で走ったことのないボクは、Ducatiディーラーの試乗が初めての公道走行だった。
この時、憧れて想像していたMonster 821の走行はシンプルに楽しかった。楽しかったのだけれど、「参考までに乗ってみますか?」と乗った『Super Sport S 937』があまりにも乗りやすく快適だった。「元の値段もそこまで大きく変わらないこと、前後サスペンションオーリンズ製で快適ですよ!」の営業トークに乗せられて、『Monster 821』に乗るために免許取得した気持ちはどこへやらで、結局『Super Sport S 937』を購入した。
(この辺りの話は過去に書いたので、もしよければお読みください)
それ以来の沢山の道を走り日本中の色々な場所へ旅にでた。
当時最新の電子サスペンション制御や、クイックシフター、トラクションコントロールのおかげで初心者のボクでも扱いやすく、雑なアクセル操作でも車体が暴れたりすること無く運転することができた。さらに名高いオーリンズのサスペンションは路上の小さな段差などの衝撃を軽やかにいなしてくれて長距離の運転疲れも少なかった。
あとやっぱりカウルとフロントスクリーンがあることは、高速道路を長距離走るときの体力減少を大幅に緩和してくれた。バイクは走行風で体力が削れていくため、これだけは本当に恩恵を感じることができた。
結局バイクの事故は疲労による不注意さが原因だと考えているので、どれだけ長距離でもフロントスクリーンとカウルのおかげで体に直接当たる風が少ないのはとても恩恵が大きかった。
その結果、知らない道も、暗い夜の高速道路も、雨の中も、不安なときはバイクにしがみついてアクセルを捻ればバイクはボクを目的地に届けてくれる。まさに旅の相棒と呼べる存在になっていた。
あとは950では難しくなっていたけれど、937は本当にメンテナンス性が良く、エンジンオイル交換時に一緒にオイルストレーナーを清掃もできたし、バッテリーも簡単に外せるし、クーラントもカウルを外すこと無く継ぎ足しができた。
事前に「Ducatiや海外ディーラーバイクはメンテナンス性が悪い」というblogやSNSの投稿などを見ていたため、自分でメンテナンスするのは大変だろうと始めはディーラーに依頼していた。ただちょっと理由があって自分で積極的にメンテナンスを始めてからは、意外とメンテナンス性がよく、最終的には定期交換品や分解清掃は自分でやるようになった。
ただ先程も述べたように950はこのメンテナンス性がかなり下がっている。カウル形状が大きく変わってよりエアロ性能が向上しているのだけれど、メンテナンスの容易性という一点では難しくなってしまっているように感じた。ただこの辺りは時代の流れで、多くのバイクメーカーは自分でメンテナンスするよりディーラーに保守点検をお願いして欲しいという考えがあるように思えた。だから簡単にメンテナンスできないような作りになっているのではないだろうか。
Ducatiが壊れやすいというのは個体差にもよるけれど昔ほどではない
6年間色々な場所へ連れて行ってくれて、いつも自宅まで連れて帰ってくれた。帰宅後に壊れたことは何度かあったけれど(シートロックラチェットが開閉しなかったり、クーラントが漏れていたり、クーラントのファンが動作不良だったり)、深刻な故障で立ち往生することがなかったのは本当に良かったと思う。
少なくともボクが乗っていて突然動かなくなって困ったは一度も起こらなかった。
エンジン警告灯がついて焦ったりしたことは何度かある。(あれが点灯するとサービスマニュアルではディーラーへ持ち込み診断機にかけろと書いてある。ちなみに診断機にかけると¥5,000だ。安くない)
それでも警告灯がついたからとエンジンが止まったり、動作しないということはなかった。最初のエンジン警告灯の点灯は、買って数カ月後の鳴子温泉帰りだったため、300kmほどエンジンが止まらないだろうかとヒヤヒヤしながら帰った。ただ結局エラー内容は排熱バルブの動作不良だった。(そこまで致命的なエラーではなかった)
しかもその原因は当時乗って帰るたびに水掃除してエンジンをかけずにいたので錆びたことによる自業自得の人為的エラー。
あとはたまに走行中エンジンがストールして止まったり(だいたいローからセカンドに上げるときよく起こった)、排熱バルブエラーでエンジン警告灯は結局2,3回その後も点灯した。
ただそれでもそのくらいの故障っぽい物で、真剣に動かーん!という故障はなかった。
もちろん、たまたま良い個体だったというのはあるかもしれない。それでも定期的に洗車・チェーン掃除しながら異常点検したり、ケミカル系や定期交換部品を適切に交換し、エンジンも定期的にレブリミット付近まで回してあげたりすればそこまで壊れないと感じた。機械の故障は大体が小さな歪みや、メカ・ストレスが原因だから極力取り除いてあげれば良い。
特にエンジンオイルは、DucatiはシェルアドバンスUltra 15-50Wで最適化してるため、長く乗ることが目的ならばシェルアドバンスUltra 15-50W使い続けるか、もしくはMOTUL 300Vなどの高級な化学合成オイルが良いのではないだろうか。
壊れやすいことを悲観して乗らない選択肢は間違いではないが正解でもない
「壊れるからな〜w」と悲観して乗らないという選択肢は、間違いではないと思う。
例えばボクの例で言えば、たまたま偶然故障が少なかったから6年間乗り続けれただけで、故障回数が多買ったらもっと早く手放していた可能性がある。もっというと故障や診断したときに修理費が高すぎて辛いと思うことがあったら、次の故障を恐れて手放していたのではないだろうか。
それは結局、何かが起こったときに維持ができないという不安の現れなので、そう感じるのであればベストなバイクではないかもしれない。
ただ「それでも欲しいんだよね」はとりあえず買ってみて考えれば良いと思う。実際問題最近Xでも話題になっていたけれど、納車された後「やっぱりなんか違う」ってことも起こり得るし、なんだったら走ってみたけど、やっぱ違うもおこりうる。
でも反対に乗りやすさ、乗りづらさ、扱いづらさ、維持の大変さなんて「案ずるより産むが易し」でもある。人生なんて、意外となんとでもなるもんだ。死んでなければ丸儲けという言葉もあるし、不安だからと諦めるよりかは行動して後悔した方が良いと思っている。
人にどう思われるとか、どう言われるかよりも自分が乗りたいバイクに乗って楽しそうと思えばボクはそれが正解だと考えている。自分にあってるかどうかなんて少なくとも他人が決めることじゃないからね。
別れは辛い
2月の雪が降った日、ボクはバイクを下取りに出すためにバイク販売店へ向かった。
走りながら、そういえば初めてこのバイクに乗って公道を走ったときは6月なのに少し冷え、雨に降られたことを思い出した。
すると不思議なことに次から次へとどこへ行った、あそこへ行った。という思い出が蘇ってくる。いつも長距離を走るたびに、「さすがに今回は故障して帰れないってならないかな」と思ったことは一度や二度どころではないし、なんならほぼ毎回そんなことを思いながら走っていた。それでもいつも夜闇の高速道路を走り抜け、無事に自宅へ連れて帰ってくれた。本当に良いバイクだ。
もちろん、もっと一緒に走りたいという気持ちはあった。
ただどこかで都合の良い解釈だとしても、年末のクーラント液漏れは「もうお別れだね」と教えてくれていたのではとも感じていた。この先どんどん他のところがガタが来る前に、良い思い出で溢れている今お別れをしたほうが綺麗にお別れできるよ、と。
高速を降りると雪が降りはじめた。
なんてお別れに相応しい天気だろう。
工場に持ち込んだあとはETCカードやRAM Mountsを外し、車検証、イモビライザー解除キーを引き渡した。すぐに簡単な状態確認が始まるも、差してあったキーには皮のキーホルダーがついたままだった。
「これも忘れ物です」とスッと外されたキーホルダーを手渡さたあの瞬間、バイクが自分の手を離れてしまったことを強く感じた。もうこのバイクはあなたのものではなくなりました。とそう伝えられたような衝撃を受けた。
その後、喪失感を感じながら帰宅し、この投稿を書こうと思いたった。せっかくだし色々バイクの写真をと思ったけれど、写真ライブラリーを見返して気付いたのは驚くほどバイクの写真が少ないことだった。その時になってやっと「もっと一杯写真を撮ればよかった……」と寂寥感を募らせるはめになった。人間は失わないとそういうことにも気付けない。
次はもう少しバイクの写真を撮ろうと思う。
この投稿が「Ducati気になってるし、悩むんだけど……やっぱり」とお考えの方に役立てば幸い。本当に良いバイクだったんだ……。
そんなメルヘン。

