いくぜ、東北 2022 GW 5/2 DAY-02

前回の続き

目覚ましは8時にセットしていたが、自然に早く目がさますことができた。
厚手の防寒カーテンをあけると、雲が少ない快晴よりの青空だった。昨日ずぶ濡れで移動したかいがあった。こんな天気の中を、知らない道を思うがままに走ることができると考えただけで嬉しくなってきた。

手早く身支度を整え、干していた衣類を手に取るとしっかりと乾いてた。
荷物をまとめ忘れ物の有無を確認したあと部屋を出る。玄関口で鍵を返却すると、連休中は朝食は提供されていないということだったが、出立前に手作りのおにぎりを2つとお見送り頂いた。東北はいつどこでも人の暖かさを感じるから大好きだ。
また来るときもお世話になろうと心に決めた。

今回の旅は、Ducati Super Sport純正オプションの左右パニアケースと1DAY ツーリングバッグの装備。純正パニアケースは専用設計なだけあって車体とデザインの一体感があってとても気に入っている。片側25Lなので両方で50L計算だが、最大積載重量が片側5kgのため、そこまで重い物は収納できない。せいぜい着替えと旅のお土産と酒瓶1本とか飲料くらいだ。
こういう宿泊ツーリングのときは、ライダー身軽になれるし、いざという時に荷物が積載できるのは重宝するので、2泊以上のときはパニアケースをつけて出かけることが多い。
そういう選択肢があることが、Super Sportの良いところだと感じる。

ホテル室内に持ち込んでいたパニアケースを再固定する前に、昨日の雨で汚れたバイクをペットボトルの水で簡易的に掃除する。バイクを掃除していると昨日同じ時分に到着して宿泊していたバイク女性も出発されるようだった。手慣れた様子で荷物を積載しボクよりも早く出発された。素敵な旅になるように心の中で祈った。


ホテルから出て石巻駅の前を通過、万石浦を超え牡鹿半島に入る。
東北の太平洋側は有名なリアス式海岸。島の入り江に沿うように幾重にも折れ曲がった道は、交通量が少ないためかとても状態が良く、対面車線も広く走りやすい。
左側に目を向けると、新芽のやわかな緑色の木々が立ち並び、右側には穏やかな陽光で煌めく青い海。入り江のため波は穏やかで風は強くない。
さらに行き交う車の数も少なく、景観を独り占め。

決して早さを競うように走り、カーブを猛スピードで曲がることを楽しむような道ではない。
ゆっくりのんびりと走り景色を楽しむ、そんな道。

来て良かった。
それが2日目に走りはじめてすぐに思ったことだった。

5月とはいえまだまだ東北は肌寒いと考え、冬用のジャケットで来て正解だった。日差しはやや温かいが、暑いほどではなく過ごしやすい快適な状態でバイクを走らせることができた。
何も過不足なく快適。
思うがままに美しい景観を楽しみながらバイクを右へ左へ傾けながら走りを楽しんだ。

知らない場所を旅することが好きな理由は、余計なことを考える暇もなく見たこともない景色が飛び込んでくるからだ。あの曲がり道の先はどんな景色だろう、あのお家はどんな暮らしをしているのだろうと思いを馳せながらただ走り続ける。

ぼんやりとした目的地へ向かい、目の前に広がる道を走る。
何か気になるものがあれば立ち寄り、何もなければ走り続ける。
今回の旅は風の吹くまま、気の向くままだ。

ホエールタウンおしか

ホテルを出発して、だいたい1時間くらい走ったとき、海側に商業施設のような建物が見えてきた。時間は10時くらいだったので、もうそろそろ開いている時間ではと視界の端で気にしていると、車とバイクの駐輪が見えたので営業していると考え立ち寄ることにした。

そもそも自分がどこにいるかすらわかっていないので、ビジターセンターの情報を眺めてはじめて、有名な金華山の近くにいることがわかった。
ただ金華山は船でしか訪れることができず、船賃が3,000円と結構高価だった。さらに往復と参拝登頂にかなり時間がかかりそうだったこともあって、今回は諦めることにした。
3年連続でお参りすると一生お金に困らない。という触れ込みには、かなり後ろ髪を惹かれる思いだった。
おしかホエールランドは残念ながら休館中だったが、ビジターセンターでは牡鹿町で暮らす方々の情報を知ることができてよかった。個人的には漁が盛んだったころの話がとても面白かった。はじめは小さな商いから大きくし、それが失敗しても最初からまたやり直せばいい。というのは本当にそうだよなーと思った。
いつからか失敗しないことにばかり力を向けている気がする。

ホエールタウンおしかから牡鹿半島の先端まではすぐだった。
コバルトライン三陸復興国立公園 駐車場に停車。海に突き出したこういう半島が大好きなので、たくさん写真を撮る。
そのあと半島からみて左手側に見える金華山を見ながら、出発時にもらったおにぎりを食べ、金華山のことをスマートフォンで調べて学ぶ。
おにぎりは手作りならではの優しい味わいだった。

金華山を見ながら朝食

次の目的地は決めていないが、まずは半島の反対側の県道220号線を登って北上することにした。どうもコバルトラインという道のようで、かなり曲がりくねっていて面白そうだった。

走り始めるとかなりの数のバイクとすれ違うようになり、道も景観も良いから地元のツーリングスポットなのだろう。

天気よし。景色良し。道も良し。
交換したばかりのDiablo Rosso IVに不安は何もなく、曲がりたいように素直にバイクが曲がってくれる。
コバルトラインは今回のツーリングで一番気に入った道だ。
金華山も行ってみたいし、機会があればまた走りに訪れたい。

シーパルピア女川

気持ちよくコバルトラインを走り続けていると終点で女川町に到着。
自転車で女川に来たときとの変化を見てみようと、道の駅 シーパルピア女川に立ち寄ってみることにした。

震災から今年で11年。
2017年に訪れたときは、更地ばかりだった印象が強かったが、順調に復興されているようで観光客が多くとても賑わっていた。寒々しかった景観は見違えたように温かく、笑顔の多い賑わいとなっていて、温かい気持ちになった。

道の駅スタンプを押印したあとぶらぶらと見て回る。
はまテラスで売られていた、ホタテ6枚1,000円をみたとき「なんでボクは焚火台を持ってこなかったのか……」と悔やんだが、次にくるときは東北キャンプも良いなと思い直すことにした。
お金を落とす目的も兼ねて、何か食べようかと思ってウロウロしたが、ちょうどお昼時ということもあって、どこのお店も混んでいた。
シーパルピアはJR女川駅まで続いている。駅近くまで歩いていくと焼き秋刀魚ののぼりが目に入った。女川は秋刀魚でも有名と記憶していたので、比較的空いていたこともあって食べることにする。時期が外れているため冷凍品ではあったがとても美味しかった。

シーパルピアを出たあとは、海沿いを走る国道398号線で北上。
途中、北上観光物産交流センターや南三陸さんさん商店街にフラフラと立ち寄った。
とくに南三陸さんさん商店街では、「ウニ丼」ののぼりが目を引き、今年はウニどうしようかなーと悩んだ。
自転車でウニ丼目当てに東北旅行したとき、「確かに美味しい。しかし次は東北の地元ならではのものを食べよう」と思ったのと、今回は何泊するかも決めずに旅をしているため、お金は取っておきたいと考えていた。

その後、道の駅 大谷海岸に止まったとき、このままだと一応の目的地陸前高田に行くのが遅くなってしまうと感じたので、大谷から高速道路に乗り込んだ。
この判断は正解で、道の駅が閉まる1時間前の16時に陸前高田に到着した。

ちなみに三陸道は女川から青森の八戸終点まで無料区間。
どこから乗ってもどこで降りても無料なので気軽に乗れる。最高だ。

東日本大震災津波伝承館 TUNAMIメモリアル

高田松原津波復興祈念公園

2021年12月26日に完成オープンというニュースを見て以来、行きたいと思っていた場所。
ボクが訪れた2019年のときには、まだまだ復興のど真ん中といった感じで、道の駅 タピック45の建物は津波による災害を受けた痛ましい姿のままだった。(今でもGoogleStreetViewだとその姿のまま)

あれから3年たった陸前高田は、重機と更地しかない場所ではなく、人が生活している町に戻っていた。ただ出来上がった施設のせいか、復興した他の町とはどこか空気が異なり、震災でなくなった人への祈りがありつづける場所のようにも感じた。

新しい道の駅に入ると、はじめにこの祈念公園への道が目に入る。
ここからは海が見えない。
白い静謐に満ちた空間を進み、階段を登ると献花台の先に海が見える。
この流れの景観がとても美しい。

献花は道の駅で販売されている。
ボクが訪れたときも献花台には多くの献花が備えられていた。
この献花台に訪れる人は、階段を登るときは笑顔で、降りるときは少し寂しそうな顔が印象的だった。きっとボクもそんな顔だったと思う。
この美しく穏やかな海が、津波のときは恐ろしい姿のだったと思うと、なんとも言えない気持ちになった。

せっかくなので、TUNAMIメモリアルへ入館。(入館料は無料)
中にある津波被害の伝承を目的とした映像資料・展示物は、津波被害は自分の想像ではとうてい及ばない現実を見せつけられる。
特に津波の力で捻じ曲げられた消防車・橋の欄干などは、見ているだけで恐ろしく思えた。
映像で見ても「すごいな…」と思うだけかもしれない。しかしそれが目の前に実物として存在することで「恐ろしい」という気持ちが強く湧いた。
やはり実物が持つ質量という情報は、映像視覚以上に訴えかけてくる何かが存在する。
資料はその他にも災害で生き延びた方の手記が展示されていて、読むと身につまされるようだった。

ゆっくりと見たかったが、閉館時間が来てしまったため退館。
思いがけない体験ができ、訪れることができてよかったと思った。

その後は、薄暗くなったこともあり、陸前高田から再度高速に乗り2日目の宿「ホテルマルエ」がある石巻まで移動。
高速を走りながら日が沈むまで海を見ながら手記の内容を思い出し感傷に浸った。

ワクチン割というプランがあったので1泊3,300円で宿泊。(現在は終わった模様)
食事をどうしようかと悩んだが、近くにイオンがあり、ちょうどブーツの靴紐が切れたこともあって、靴紐を購入も兼ねてイオンで済ませることにした。
ついでにこれはボクの完全な落ち度だが、道の駅のスタンプを押しているトラベラーズノートの残りが僅かだったことに今日気づいた。
運良く交換用のリフィルがないか探したが、さすがにそんなものはなかった。
靴紐と安売りされていたお弁当を買ってホテルに戻り2日目は終わった。

3日目に続く

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