正丸山・伊豆ヶ岳ハイキング
ここ最近あまりにも土日は部屋でゴロゴロしすぎていたこともあり、今週火曜日は祝日(建国記念日)だったので久しぶりにハイキングへ行こうと思った。しかし前日誘惑に負けお酒を飲んでしまったことにくわえ、この冬一番の寒気襲来!と布団から出るのが億劫な理由の二重苦。二度寝の誘惑に負けた。人間は弱い生き物。
今週末は必ずハイキングに出かけよう。そう決心し、前日夜にはリュックに荷物を詰め込み出立の準備を行ってから布団に滑り込んだ。
どうして突然ハイキングに行こうと思い立ったかというと、今年に入ってから土日に何かをすることが本当に億劫だったことが原因だ。おそらくこのまま何も考えることもなく、先延ばしグセのようなものが出来てしまったら、今年一年を怠惰に過ごしそうな気がした。
今年はとくにインフルエンザで寝込んだこともあり、年末から新年にかけての旅行もしなかった。だから旅先で自分を見つめ直すといったこともできていないのが原因の一つだと考えている。安定した日常の繰り返しは幸せのぬるま湯だから仕方ない。
旅は非日常に連れ出してくれるからこそ、普段は気づかないことに気づかせてくれたり、忘れてしまっている大切なことを思い出させてくれる。
とはいえど旅をするにはお金が必要なため、バイクや電車旅は少し腰が重かった。
自転車の旅も少し悩んだものの、やはり日帰りでいける範囲はもうだいたい行き尽くしたため新鮮味がない。
そこでふと昔冬季は山に登り頂上の休憩所で景色を楽しみながら豆を挽きコーヒーを淹れ、カップラーメンを食べるハイキングをしていたことを思い出した。
そうと決まればどこの山に向かうかとなる。ブランクもあるため無難にまずは高尾山でも考えたものの、どうせなら登ったことがない場所が良いと考えてしまう。そこでふと「筑波山はどうだろうか」と思いついた。筑波山は自転車でこそ何度も登っているけれど歩いて登山はしたことがなかったからだ。早速筑波山の登山口までの交通料を調べたところ、つくばエクスプレスでつくば駅までの運賃は安いものの、つくば駅から筑波山神社(登山口)までのバスが1000円ほどかかるようで往復すると結構な料金になる。
少し悩みながら他の場所も探したところ、秩父手前の伊豆ヶ岳が初心者にもオススメと「山と渓谷」のWebサイトで紹介されていた。(アクセスのしやすさが魅力!駅近郊の名低山6選 | 山と渓谷オンライン)
交通費を調べるとスタート地点の西武秩父線 正丸駅までの片道運賃も手頃だったため、ここにしようと即決。
あとは週末までにトレッキングシューズの準備をしようかと悩んだものの、またハイキング趣味が再燃するかどうかはわからなかったため、今回は普段履き慣れているスニーカーで行くことにした。
そしてそれで大いに後悔するはめになった。
YAMAPアプリで登山計画書を提出 + モンベルの短期アウトドア保険
山の遭難事故は結構な頻度で起こる。そして単独で山登りするとつきまとう問題が転落や道迷いによる遭難だ。YAMAPアプリを使えば手軽に登山計画書を作成し担当県にオンラインで送付することができる。便利すぎて感動した。登山計画書は遭難捜索のとき役に立つ。
保険はYAMAPでも加入できたが、モンベルの短期アウトドア保険は携行品保証がついているためそちらにした。
ハイキングは始発で向かうのが必須というのを忘れていた
最近起きたら動こうという癖で7時に起床し、8時に出立してしまった。
問着予定時刻が10:30とかでて、終わった感半端なかった。最初の行程表はWebサイト紹介ルートそのまま設定していたけれど、それだと16時を超えてしまいそうだった。
さすがに山の中で日暮れは危険すぎることを知っていたのでルート変更した。そしてYAMAPアプリで再提出できたので本当に助かった…。
冬季ハイキングは15時までに下山できないのは危険なのをすっかり忘れていた。
正丸駅〜正丸山
飯能駅からは各駅停車の西武秩父線に揺られ山間を進んでいく。
電車の中でYAMAPを見ていると、利用者の人が道に迷い安い箇所や危ない場所をコメントで警告してくれていた。一応今回通るルート上にあるものはくまなく確認。登山中も迷いやすい場所を写真つきで教えてくれているこの機能は今回とても助かった。便利な世の中だと思うし、積極的に投稿してくれている先達の方々に感謝しかない。
正丸駅には飯能駅から40分ほどで到着。
無人駅のタッチ式の改札を抜けると山小屋と銘打ったお店になっていた。前は売店だったはずなのにと思ったら、去年から変わったようだった。
スターバックスのコーヒーを飲みながら電車を移動し、駅にはゴミ捨て場があるだろうと思っていたけれど、無人駅のためかゴミ捨て場はなく持ち帰ってくださいとあった。しょんぼり。
まずは駅から県道299号線沿いに歩き旧正丸峠を目指す。
この日は雲一つない快晴だった。冬の透明な空気ごしに見える青空の色が好きだ。
駅から道沿いに歩いているとバイクと自転車で登っていく人達を見かけた。この日はそこまで肌寒くなかったのでバイクできても良かったかなと思いはしたものの、またバイクは温かいようであれば来週どこかへ行こうと思い直した。
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道から集落を通り抜けるとすぐに山に入った。
聞こえるのは小川が流れる音だけの静かな空間。
紹介されていたルートは道幅が広く利用者が多いとあったが、再作成したルートは他の利用者はいないようだった。
自転車やバイクだと音楽を聞いていることが多いためふと考えごとをしたりする。ところがハイキングは目の前の道に集中しているためか他のことを考えることは少なかった。気を抜いて歩いて足を踏み外し、そのまま転落という命の危険があるからかもしれない。
何かあった時の備えとして服を余分に持ってきていたものの大半は不要だった。(ユニクロのライトダウンや薄手のウィンドブレーカー)登っているときは汗が吹き出てかなり暑かった。この日はUnderArmerのコールドギアの上にセーターを着用、その上にダウンジャケットを着ていたものの、発熱するコールドギアで汗がすごかったのでセーターを脱ぎ、持ってきていたジャージの上に着替えた。それでもダウンのジッパーを全開にしないと暑くて汗が滴るほどだった。
1時間ほどで旧正丸峠へ辿り着き、もうだいぶ登っただろうと先を見上げるとあと少しではあるものの急勾配の道が山頂まで続いていていた。木製の階段があるもののかなり段差があるため登るのに難儀。このあたりから左足膝裏がやや痛む。登山は日常で使わない筋肉をフル活用するのも思い出した。
そしてなんとか登りきるもそこは正丸山ではなく、川越山だった。
もうゴールでいいかな……。と思う気持ちを奮い立たせて尾根づたいを歩いていく。尾根づたいなら楽かもと思っていたら、またしても急勾配。60度くらいないか、これ……(今回のアイキャッチ)
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正丸山の山頂でやっと他の登山者に出会う。杖もなく軽快に登ってらっしゃる。というかこの山降りる時も急勾配なの……山は降りる時の方がふんばるためか足に疲労がたまる。しかも急勾配で段差があるため降りづらい。
しかし加えてやけに滑る。土の質だろうか……とスニーカーの裏を見たらツルッツルだった。山舐めすぎでしょう。死ぬのぉー?
登ってる時は全く気づかなかったけれど、滑りやすい靴のせいで下るときの方が3倍くらい精神がすり減るし、足に負担もかかるで大変すぎた。
正丸山の中腹にベンチがあったので昼食休憩。
前はもうちょっとなんか色々考えていたはずなのに、まだ目的地の伊豆ヶ岳が残っていることもあって、無心の燃料補給と休憩となった。
なんか思っていたのと違うハイキングになってきたな…と思った。
正丸峠〜伊豆ヶ岳〜正丸駅
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その後、また尾根づたいに伊豆ヶ岳を目指す。
YAMAPで「危ない」とコメントされていた場所は「確かに踏み外すと死にそう」みたいな場所が多かった。ただそれ以前にちょっとした下り傾斜で3、4回ほど滑って尻もちをついた。トレッキングシューズの重要性を感じる。「スニーカーで軽い登山はいけますよ」を鵜呑みにしてはいけない。行けるけど大変だ。あとすり減っていないスニーカー前提。
さらに伊豆ヶ岳山頂付近はガイドロープ越しに登るような結構な急斜面で、滑りやすいボクは一苦労。
そしてなんとか登頂。
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伊豆ヶ岳頂上でコーヒーをもう一度淹れようと思っていたけれど、この先のルートはまた来た道を戻る必要があった。しかも下りで。頂上で一息ついてしまうよりも、この緊張感を維持したままに安全な場所まで降りてしまったほうが良いと判断し、そそくさと下山。それでも案の定登る時に苦労したガイドロープエリアでずるっずるに滑って気が気でなかった。崖下レッツゴージャスティンしそうな未来がチラチラと見え隠れしていた。
その後も定期的に滑る足元をふんばりながら駅を目指して下山。(残り4.5km)15時を過ぎると太陽は見えているのに森の中は暗くなりはじめた。山中の森はこれが怖い。日没の1〜2時間前の下山できるスケジュールを組むべきと言われる理由もここで、時間に余裕がないハイキングは避けるべきだ。
歩いているときは足が辛いなーくらいだけれど、少しでも立ち止まると足がガクガクと震えるほどに余裕がない。それでもなんとか足を進めているとやや広い登山道に出た。看板には駅まで2.2kmとあり、まだ2kmもあるのかと思っていると数百メールほどでアスファルトの道に出た。
自然と人工物の境界を越えるとき、なんとも言えない安堵感がある。
もちろん日常でも車でハネられたりすれば容易に死ぬが、山の中だとバランスを崩してとか、足を踏み外してとか、膝に力が入らなくてなどの理由で歩道から転落し、そのまま誰の目に触れることなく孤独で死ぬ可能性もある。そういった念慮から開放される独特の感覚があるため、ボクはこの瞬間を好ましく思っている。
駅までの道を歩きながら、「大変だったけど楽しかった」と「なんでこんな大変な目に自ら……」という感情がまぜこぜになった。
結局山の上から見下ろせば何か見つかるかもなんてのは一切なく、ただただ「死なないようにしよう」という生物の根源みたいな思考しかなかった。
色々な物に囲まれているから色々なことを考える。自然の中で何もなければその時はどうやって生きるかしか考えない。生きるのは難しい。
次はハイキングシューズを用意しよう。
そう思いながらボクは帰りの電車へ乗った。
もし登山ハイキングに興味があれば、「これで死ぬ アウトドアに行く前に知っておきたい危険の事例集 / 著: 羽根田 治」は一読をオススメしたい。(AmazonのPrime会員は無料で読める)
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人間意外とアウトドアだと「そんなことで?」みたいな気軽さで死ぬことが多い。
今回ボクも何回も滑って転んで尻もちをついているが、ハイパーウルトラ愚かでそんなことですら死ぬ場合がある。(山中で動けなくなってという事例も数え切れない度にある)
ハイキングは気軽にそういった普段体験できないことも味わえることも魅力だと思う。