bar hotel 箱根香山に泊まった話

不仲極まりない両親が今年から別居した。数年前から母は足を悪くしていたので介護が必要なレベルだったのに、父とは仲が悪いため立ち行かなくなり結局介護施設に夏頃入ることになった。
そのあと父から「あいつ(母)から手切れ金として家に入れてた金を少額返されたので豪勢に使いたい。祝おう。これからの自由を」と言われたので、それならば行きたいとは思っているが行く踏ん切りがつかない『bar hotel 箱根香山』に泊まってみたいと話をしたら、「最高じゃないか。泊まろう」と話がまとまり、11月の半ばに有給を取得して旅行に出かけた。

いつものようにダラダラと自分の思い出を書く前に、「bar hotel 箱根香山」って行く価値があるか?と気になって訪れた方へ評価を書きたい。
もしあなたが以下のいずれかに当てはまるのであればお金に見合う体験を得れるためおすすめできる。

  • お酒がとても好き。(種類問わず)
  • 一度くらいBARで時間を気にせずしこたま呑んだあと、そのまま寝たい。
  • BARに行ったことがないので経験してみたい。

ちなみに主な客層を聞いてみたら、意外と20〜30代(40代前半)が多く、「BARに行ったことがないので行ってみたかった」とお客様が多いとのこと。

料金については、どのプランでも基本的にBARの利用料は含まれているため飲み物の料金はかからない。アラカルト(軽食・食べ物)だけは別料金のためディナープランにしてBAR利用もありだろう。とはいえどボクが利用した日はディナー付きプランの利用者は居なかった気がする。(近場で食事できるところはないので注意)

宿泊プランは結構値段がピンキリ。翌日がお休みの日はすんごい高いけれど、翌日が平日だと一人3万くらいに落ちる。部屋タイプおまかせ!で朝食無しならば2.3万〜と値段に波がある。しこたま呑んでバタンキューできて箱根温泉に泊まれて2.3万は結構良いと思う。
朝食はビュッフェスタイルでシャンパン・ワイン飲み放題付き。
その感想はあとで書くとして、「しこたま呑んだ翌日は朝から食欲がわかない……」というボクのようなタイプは無しを選ぶのも良い。

一部屋あたりの値段なので2人でもお得。逆に一人で行く場合はこの値段。

ホテル送迎の注意点について

もし箱根登山列車で向かう場合はかならず「彫刻の森」で降りること。決して「ホテルは小涌谷が近いからここかな」とボクみたいな愚かなことをしないように。迎えに来てくれない。謎ではある。結局タクシーが通りかかったので乗せていってもらった。遠い駅は送迎可能で近い駅が送迎不可ってなんなのぉ……。


DAY #01

チェックインは18:00から

東京からなら小田急ロマンスカーでちょちょいのちょいやろーと下調べもせずに、「そろそろ出るか」で移動しはじめるバカおるー?ボクです。シンプルにカス。
最短到着が3時間って表示されて五度見くらいしたよね。イメージだと1時間30分くらいでつくと思ってたので全然遠かった。そして原因は何故かナビが「バスがいいの!バスでいくのー!やーだー!バスがいいの!」と頑なにバスを工程に組んでいたから。
電車で小田原につくまで調べていると登山列車はまだ走っている時間なのに、なぜ???と電車で移動したら普通に18時20分ごろに小涌谷駅に到着した。

ホテル予約後、予約日の確認と送迎案内の電話が事前にあり、「最寄り駅に到着しましたらお電話ください。お迎えにあがります」とのことだったのでホテルに電話したところ、「小涌谷駅は送迎対象外でして、彫刻の森ならいけます」と言われる。地図だと最寄り駅は小涌谷駅のはずなのに送迎不可なのはなんで???(どうも外国人のスタッフの方が電話応対した模様)
それなら1kmくらいなら歩いてもいいかーと徒歩で向かおうとしたら運よく向かい側からタクシーが来たので利用させていただいた。


ホテルに到着すると入口前にスタッフが待機しており、中へ案内される。
高級ホテルには縁が無い人生だったため、奥まったエントランスにはホテル名がないことにまず驚く。ホテル入口を隠すような重厚な木製自動ドアをくぐり抜けると奥には「bar Hotel 箱根香山」のロゴをあしらったスリット入りの自動ドア。スリット越しに見える薄暗い室内ではバーカウンターとボトルラックの明かりが見えた。なるほど、Barのハイドアウトがコンセプトとして表現されているんだなと感心した。

入口のフロアには暖炉スペースもある。
受付の記入をしている間に、ウェルカムドリンクで提供されたのだけど、このシャンパンが呑んだことがないレベルの味わいで美味しすぎる。「これおかわりしても良いんですか……」と声がでかけたが、他のお酒の味がわからなくなってしまう!と心を抑えた。普段カルディでゴミみたいな値段のスパークリングワイン呑んで満足してるせいかウェルカムドリンクだけで満たされそうになった。

部屋は一番安い部屋にしたのもあって、ロビーから一番近い部屋だった。面白いのは今どき珍しくドアがオートロックではなく手動施錠の鍵で、鍵にはずっしり重いスチール製のキーホルダーが付いていた。これも理由を聞いてみたところ「飲みすぎて部屋に鍵を忘れるといったことがないように」という配慮らしい。

部屋は正直良し悪しは不明。高いホテルはこういうものだよねーという塩梅だと思う。ただ翌朝部屋から見える箱根の山々の景色は、紅葉が始まっていたためとても綺麗だった。そのため寝起きにぼんやりと見て過ごすにはもってこいでとても良い部屋に感じた。あとベッドも結構大きかったこともあり、ボクでも足が出ることもなく快適に就寝することができたのが良かった。もしお金があればこんな場所に住みたいと思える。

温泉はHinokiとKazanに別れ、Kazan側には露天風呂とサウナがついている。Hinokiは内風呂だけで、夜の利用は男性がHinoki、女性がKazanはとなり、朝の利用は逆になる。
男はどうせ飲む前や飲んだ後に入る風呂の良さなんてどうでもいいだろ!という感じがするもののほぼ正解だ。

肝心のBarは素晴らしい。これでお酒飲み放題は天国のようだ

公式サイトの写真。雑誌掲載の写真を見て、こんな景色を見ながらBarで飲めるの良いなーと思ったのが行きたかった理由。

はじめに言うと、Barは色々な種類のお酒が沢山貯蔵されていたり、めったに見ないような珍しいお酒があるわけでもない。「帰ることを気にしないで飲めるBar」というのがとても価値がある。高級なホテルにあるラウンジBarをメインにしたホテルという感じだろう。
ボクは写真で見たような日が暮れる夜景を見ながらお酒を呑める!と思っていたけれど、訪問した11月だと当然のように真っ暗だった。だから見える景色は山と木々のシルエットだけではあったものの、それでも個人的にバーラック越しに景色を見ることが好きだった。

これも何度か投稿で書いた記憶があるけれど、ボクは人生で一番良く客として通ったBarは神戸のハーバーランドにある撞球倶楽部というビリヤード場近くにある小さなBarだった。特別バーテンダー(マスター)の腕が良いわけでも、珍しいお酒があるわけでもないただのBarだったけれど、不思議と初めてフラッと入ったときからマスターと話のウマが合い、よく通い会話した。
そのBarは国道2号線沿いの角にあり、カウンターからはボトルラック越しに夜の埠頭と走り去る車のライトを見ることができた。あの都会のチルタイムみたいな時間が本当に好きで、ボクは今でもLo-fiだったりChill musicが好きなのはそのあたりが原因ではと思っている。

さっそくメニューを見て注文。
ボクはTORIAEZUというオリジナルカクテルを頼み、父はバーテンダーに相談してもらいながらウィスキーをストレートで色々と試してはどれも気に入っていたようだった。
このTORIAEZUというジンベースの飲みやすいショートグラスのカクテルがまた美味しい。
またおかわりしたくなる気持ちを抑え、次はゴッドファーザーを注文。
これもまた美味しい。
ゴッドファーザーはウィスキーとアマレットを3:1でステアして作る定番のカクテルだが、店によってはアマレットが多すぎて甘すぎたり、チョイスするウィスキーの味が強すぎたりで喧嘩していたりと意外と美味しいゴッドファーザーに出会うことが少ない。記憶にあって美味しいと思ったBarは、渋谷青山にあるBar Radioくらいだった。
その次はオリジナルのHAKONEを注文。もはやどれを注文しても美味しく感じるようになってきた。

その後もバーテンに色々と訪ねお酒を注文し、父と会話したり、アラカルトを思うがままに食べて呑んでと自由なくつろぎの時間を過ごした。
ゆっくりとした時間の流れを感じれるとても良いひとときだった。

以前、父と飛騨高山に宿泊したときも写真を撮った。ボクは今でもたまにその写真を見返すことがある。思えばボクは家族の写真を今まで撮ってこなかったし、今でも自分を写真に収めるのが酷く苦手だ。
それでも父や母が亡くなる前に、これからは1枚でも多く写真を撮ろうと思い、今回は忘れないようにカメラを持ってきた。


Barの閉店は25:00らしいけれど23:30ごろには部屋に戻った。
「飲みたりなかったり、寝付けないときはお気軽にお戻りください」と声がけされ「そんな自由が許されてもいいのか……良いんだな…」と感慨深くなる。
「bar hotel 箱根香山」は定宿先として利用して欲しいみたいなことを書いているので、心のエスケープゾーンとしてありたいのかもしれない。
それなら独り身用のホテルバージョンで1泊2.5万くらいであればなー…。

部屋に戻りベッドに潜ったあとも母のことや今後のことを父と話した。
数年前は考えたくないと思っていた話は、現実味を感じるという時の流れによって考えなくてはいけない問題として横たわり始めていた。
なんとかならないかなー、なってー!落ちてる宝くじ拾って当たってくれー!頼むー!(他力本願寺総本山)

DAY 02

翌朝、起きてお風呂へ。
Kazanはサウナと露天風呂付きでHinokiよりだいぶ広いお風呂だった。
露天風呂から紅葉に染まる箱根をぼんやりと見て過ごす。朝からなんて贅沢な時間なんだろう。露天風呂から見える景色を遮るものがないので、湯船に揺蕩いながら景色を眺めることができる。最高だ。

公式サイトの紹介写真

サウナも少し利用してみたが、思ったよりもアッツアツ。しかし朝からサウナで整いたいかといわれるとそんなわけもなく。なんなら呑みすぎてグロッキーだから優しくされたいため、ゆらゆらと露天風呂を楽しんだ。

朝食のビュッフェを父は楽しみにしていた。
「朝からシャンパンなんて最高すぎるだろ」と期待していたようだが、ボクは「そんなビュッフェについてくるシャンパンが美味いわけ……」と思っていたので、「炭酸が抜けてる……」とちょっとションボリしていた父の顔を見て「でしょうね」の言葉は飲み込んだ。

ボクの人生において美味しいホテルのビュッフェは存在していないので、「豪華な朝食だなー」くらいの気持ちは裏切られることはなかった。オレンジジュースは美味しかったので、これと焼き立てのクロワッサンとバターで良いよ。の気持ち。というかなんなら昨晩のアラカルトにあったバケットで良いまである。ついてたバターはたぶんエシレバターだったし。バケット美味しすぎて4回頼んだけれど狂った客として備考欄に記載されそう。(¥500 x 4)

朝食のビュッフェを食べながら眺める箱根の景色もまた雅。
有給を2日取って来たというのも心理的に作用しているけれど、今まで一人で生きてきたために、家族と過ごす安心した時間を忘れていた。
心が穏やかで、いつもなら気にしているはずのことを気にしていないかのような自由を感じた。

朝食コーナーから出る際にチェックアウトの話を伺う。
14:00までは自由にお過ごしくださいとのことで、「そんな長くゴロゴロして良いのか」と少し驚いた。ただ父が新幹線でまた長い時間帰るため朝食後は片付けて部屋を出た。

チェックアウトの話を伺った際に、「Barカウンターで自慢のコーヒーとチーズケーキを提供しているのでご賞味ください(サービスに含まれている)」と案内されたので味わう。ベリーのソースも甘さが控えめで美味しいし、コーヒーもサイフォンで丁寧に淹れてくれたコーヒーで飲みやすく美味しい。

送迎は「彫刻の森」でお願いし、「10時に別のお客様と相席か、もしくは9時40分でお送りします」といわれたので9時40分でお願いした。
時間までゆっくりとコーヒーを味わいながら、昨晩は暗闇で見えなかったボトルラック越しの景色を眺めて過ごす。
昨日、ホテルに入ってから出るまで良い時間を過ごしたなーと心から思えた。
やっぱり高級なホテルってサービスが行き届いてるのを感じる。

「bar Hotel 箱根香山」は宣伝らしい宣伝をしておらず、たまに雑誌の取材でご紹介頂くだけで他はお断りしているんですよねー。と昨晩バーテンの方が言われていた。
この静かにゆっくりとした時間が流れているのがすごく良いし、それはある程度そういった広告の仕方で客層を選んでいるのも効果的に機能しているからかもしれない。

ここまで割とべた褒めなのだけれど、このホテルで一つだけめちゃくちゃ気になったことがある。それはロビーのBar併設のトイレの男女入口扉が自動開閉しない。なんなら開きっぱなしだ。あれがメッチャクチャ気になって、「えぇ……なんでぇ……設計ミスか?」と思ってしまいバーテンに尋ねてしまった。
「あれは僕らもめちゃくちゃ気になっていて直して欲しいと運営元に言っています」と言っていたのでそのうち直るかもしれない。酔った人が挟まれないようにとかあるかもしれないけど、見た目が悪すぎる……。そこだけ残念だった。

帰りは駅までベンツで送迎されるというのもまたなんとも高級ホテルな感じる。
最後まで良い体験ができた。


箱根湯本駅で父とは別れた。
ボクはロマンスカーに乗って帰ることにした。

別れ際に「またどこかに泊まりに行こう」と父から言われ了承した。
ロマンスカーの窓の外を流れる景色を見ながら、それでもあと何回、父と旅行に行くことができるだろうかと淋しく思った。
そんなある日の出来事。