#171225

悲しみが降り積もるように

どこにでも転がっている悲しみのニュース報道で、ふと共感した。

所持金7円でラブホテルを利用… 
さらに“ルームサービス”でエビグラタンを注文 無職の女(45)を逮捕 旭川市

女は、12月15日午後8時ごろから16日午前11時半ごろまでの間、支払う意思や能力がないのに、旭川市2条通6丁目のラブホテルに1人で宿泊し、宿泊代金など合計1万3110円を支払わなかった疑いが持たれています。
警察によりますと、女は宿泊中にルームサービスでエビグラタンや飲料などを注文していたということです。

所持金が残り僅かでもうどうしようもなく、雪の降る北海道。
温かい部屋で過ごしたいと願うのは人間なら誰しもが持つ感情だろう。
後ろめたさに苛まれながら、余裕の無さが起こした犯罪。
それでもホテル内は暖房が効いていて、温かい布団とシャワーがある。

身体を温めた後は人心地つくため空腹に気づくだろう。どうせ無銭飲食なのだ。ルームサービスを利用しなくても罪の重さは今更変わらないと思えば頼まないなんて選択肢はない。

メニューには空腹を刺激する料理写真が並んでいただろう。
どうせならたくさん食べてお腹いっぱいになるしっかりとした食事を選ぶはずだ。
ところが選ばれたのは「えびグラタン」だった。

えびグラタン。
表面のチーズは焦げ、白いクリームソースがフツフツと煮え立つ。クリームソースの中にマカロニと小さなエビが入っていただろう。フォークを差し込むと表面が割れ、中から湯気が立ち上るあの料理。

今でこそ冷凍食品でレンジで作れるため定番の保存食だけど、ボクの印象にあるのは子供のころに外食として洋食レストランに行ったときにだけ食べることができる不思議な温かい料理だった。(家庭で母親が作ってくれたときはなんか変な料理だった)
外食している間だけは両親はそこまで仲が悪くはなかったこともあって、数カ月に一度あるかないかの外食がボクは嬉しかった。

おそらくこの女性も同じように、子供のころの楽しく幸せだった記憶を思い出したくて、まるでマッチ売りの少女が持っていたマッチに火をつけたように温かい「えびグラタン」が食べたかったのだろうか。

そう思ったとき、「案外自分の最後に食べたたいものってえびグラタンなのかもなー」と常日頃考えている最後の晩餐がうっすらと思い浮かぶような気がした。
世界が幸せでありますように。

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